2014-07-13 朴守賢 インタビュー 5/8

  • 吹奏楽との関わり方

――Wikipediaの朴さんの項目には「吹奏楽の作曲家」というカテゴリーがついていますけど、そう言われることに対して、何か思うことはありますか?

「それは好きにしてくれたらいいです。まあこの賞を取った以上は、僕のキャリアの中では吹奏楽での認知度が一番高くなりますよね。だから当たってなくはないです。『吹奏楽の作曲家』というカテゴリーなんでしょ?『吹奏楽しか書かない作曲家』というカテゴリーじゃないからいいです」

――これからは吹奏楽をメインにしていこうとか、そういうのは?

「もちろん、僕の大きなフィールドにはなると思います。ただ僕は吹奏楽しか書かない作家ではないので、あくまで自分がさせていただけることのひとつに吹奏楽があって、今はそのシェアが大きいということだと思います。まあ実際に得意でもあるので、例えば来年一年そこにどっぷりになっても、それはむしろそういう時期なんだろうと思うわけです。今まではどっぷりを自ら避けていたんですが、今は自らそこに入って、より音楽的にも文化的にも魅力のある吹奏楽にしていこうと思っているので、望むところです。僕は吹奏楽の外でも色々な活動をしているから、そういう新しい空気を吹奏楽にも持っていけるし、逆もまた然りなので。そういう、自分ならではのフットワークとか活動のスタイルというのは楽しいですね。秋にポーランドに行きますけど、あれは国際現代音楽協会(ISCM)、つまりがっつり現代音楽のフィールドですよね。たまたま軍楽隊のカテゴリーがあるんですけど、オケだったり合唱だったり、色んなカテゴリーがあるわけですよ。現代音楽の世界では吹奏楽の認知度や見られ方というのは決して高くはない。だからこそ、例えば吹奏楽を使った現代音楽へのアプローチというのは、僕ができることだなと思います」

――なるほど、確かにそうですね

「僕にとってはISCMで入選したこととかはすごく大きいんですけど、国内の認知度で言ったら、やっぱり吹奏楽コンクールの課題曲が多分一番だと思うんですよ。それで認知度が高まることによって、他の活動にも色々と波及効果があればいいなぁとは思っています。現代音楽もそうだし、僕が色々と書いている他の音楽、例えば民族楽器や和太鼓の曲、これから書きたい創作童謡とかもですし、赤ちゃんや児童に対するコンサートとか。それはよくある『0歳からのクラシック』というスタンスじゃなくて、勝手に大人が枠組んでいる音楽ではない、結構硬派なプログラムとか、例えば現代音楽とか、子供の方が多分聴く耳を持っていると思うので、そういう音楽を子供たちに聴かせる機会とか。まあ例えばですけどね。それから、10年くらい続けている世界各地での芸術国際交流と吹奏楽が繋がれば面白いし、自分が演奏するライブもまた積極的にやりたいし、震災復興支援のCD(東日本大震災復興支援アルバム『道』)に収録させていただいた『雨ニモマケズ』も歌って支援の場を増やしたいし、そういうところにも今後繋げていけるのが楽しみです」

――これもWikipediaの作品リストを見て思ったんですけど、朴さんの作品はほとんどが海外での入選や受賞で、海外で先に評価されているんですよね。いわば逆輸入的な作曲家ですよね

「そうそう。そうですよ、本当にそうなんです」

――やっと気づいたかジャパン、と

「はははは。どっちかと言うと、Jリーグ入る前に先に向こうでプレーしてたみたいな」

――カズ的なポジションですね

「そうそう。まあでも見てくれている人は見てくれていて、『あ、朴さんやっと取れたね』とか『むしろ今まで取ってなかったんだね』と言ってくれる人もいました」

「吹奏楽への思い」につづく>

朴 守賢(パク・スヒョン)

1980年2月、大阪生まれ。
大阪音楽大学音楽学部作曲学科作曲専攻出身。

吹奏楽、管弦楽、室内楽、民族楽器、合唱、歌曲、朗読音楽、等の作曲・編曲
TVドラマ、CM、映画、劇音楽等の劇伴音楽制作
クラリネット、リコーダー、雲南の横笛「巴烏」(Bawu)等の演奏
指揮、音楽指導
音楽を通した世界各地での芸術国際交流
等で活動中。