第63回(2020年)グラミー賞クラシック部門

≪最優秀オーケストラ演奏賞≫
アイヴズ:交響曲全集
グスターボ・ドゥダメル(指揮)ロサンジェルス・フィルハーモニック

≪最優秀オペラ録音賞≫
ガーシュウィン:歌劇「ポーギーとベス」
エリック・オーウェンズ(バス・バリトン)、エンジェル・ブルー(ソプラノ)デイヴィッド・ロバートソン(指揮)メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団、ほか
David Frost(プロデューサー)

≪最優秀コーラス歌唱賞≫
ダニエルプール:オラトリオ「イェシュアの受難曲」
ケネス・オヴァートン(バリトン)マシュー・ワース(バリトン)ジョアン・ファレッタ(指揮)バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団&合唱団、ほか

≪最優秀小編成アンサンブル演奏賞≫
「Contemporary Voices」(ラン、ヒグドン、ツウィリッヒの作品)
パシフィカ弦楽四重奏団

≪最優秀クラシックソロ演奏者賞≫
テファニデイス:ヴィオラ協奏曲
リチャード・オニール(ヴィオラ)デイヴィッド・アラン・ミラー(指揮)オールバニ交響楽団

≪最優秀クラシックソロ・ボーカルアルバム賞≫
スマイス:ソプラノ、バス・バリトン、合唱と管弦楽のための交響曲「ザ・プリズン」
サラ・ブレイリー(ソプラノ)ダション・バートン(バス・バリトン)ジェイムズ・ブラッチリー(指揮)イクスピアリメンシャル管弦楽団&合唱団

≪最優秀クラシック作品集賞≫
ティルソン・トーマス:アンネ・フランクの日記から/リルケの瞑想
マイケル・ティルソン・トーマス(指揮)サンフランシスコ交響楽団、ほか
Jack Vad(プロデューサー)

≪最優秀クラシック現代作品賞≫
ラウス:交響曲第5番/サプリカ/管弦楽のための協奏曲
ジャンカルロ・ゲレーロ(指揮)ナッシュヴィル交響楽団

≪最優秀エンジニア・アルバム賞(クラシック)≫
David Frost、Charlie Post(エンジニア)Silas Brown(マスタリング・エンジニア)
ショスタコーヴィチ:交響曲第13番 変ロ短調「バビ・ヤール」
リッカルド・ムーティ(指揮)シカゴ交響楽団/アレクセイ・チホミロフ(バス)シカゴ交響楽団合唱団男性メンバー

≪年間最優秀プロデューサー賞(クラシック)≫
David Frost(プロデューサー)

雨が運んできた6つのストーリー-Sumika.『音ノ雨』

《音が澄み香るサクソフォン奏者》Sumika.さんの2作目となるミニアルバム『音ノ雨』が届きました(※前作からアーティスト名の表記が微妙に変わり、最後にドットがつきました)。前作同様、まずはクラウドファンディング支援者にリターン品として届けられており、オンラインショップでの一般販売は11月27日からになります(発送は12月上旬予定)。前作のクラウドファンティングでは、2ヶ月余りの期間に173人から85万円を超える支援がありましたが、今回は人数・金額ともに前回を大幅に上回り、1ヶ月間で255人から160万円近い支援を受けて制作されました。

(前作『音ノ辞書』のプロモーション映像)

今回のアルバムのテーマは「雨」です。全ての楽曲は、インターネット上では「ものはっぱ」という名前で活動されている、ピアニスト兼作曲家の水谷健太郎さんによる書き下ろしです。ソプラノサックスとピアノによって、雨にまつわる6つのシチュエーションが描かれています。

アルバム全体の雰囲気として、これは「大人の雨」だなと思いました。1曲目『雨空散歩』には童謡『あめふり』のフレーズが何度も登場します。でもそれは、子供が『あめふり』を歌っている様子ではなく、そんな子供時代を思い返している大人が主人公です。2曲目の『君と絹傘』は作曲者の解説によると、傘を貸してくれた女性に一目惚れした青年の思いということですが、これも実にしっとりとした大人の感情です。例えばもし彼が高校生だったとしたら、もっとダイレクトに「好き!」「付き合いたい!」「手を繋ぎたい!」と妄想大爆発になるはずで、もう二度と会えないという事実をこんなにも物分りよく切なく受け入れたりはできないと思うのです(僕だけでしょうか……)。それはともかくこの曲は、すごく想像を掻き立てられます。この曲を元にした小説を書きたくなる気分です。きっとそのストーリーは、書きたい人の数だけあることでしょう。

3曲目の『五月雨のワルツ』は、梅雨の憂鬱を吹き飛ばすイメージで書かれています。これも雨を心から楽しむ無邪気な子供ではなく、長雨が憂鬱だという気分がどこかで抜け切っていない、現実的に生きる大人の姿が浮かんできます。4曲目『小夜時雨』は、時雨が降る月明かりの夜に、古民家の縁側に座って庭を眺めながら物思いに耽る様子です。僕はこの曲を聴いていると、お寺で座禅を組んで心を無にしているような気分になります。

このアルバムは、前半の4曲と残りの2曲とではキャラクターが違っています。アルバムのテーマは「雨」ですが、前半の4曲が描いているものは「雨」そのものではありません。どの曲も雨の中にいる「人物」にスポットが当たっています。実はこれは、1枚目のアルバム『音ノ辞書』との違いでもあります。極私的な感想ですが、『音ノ辞書』で描かれていたものは、風景そのもの、もしくはその風景から感じられる、言葉にならない抽象的な感情だったと思っています。一方、『音ノ雨』の4曲には人物の姿がはっきりとあり、その人物の感情の流れが、音楽の中のストーリーとして存在しているのです。

5曲目『夕立』と、6曲目『虹のソナタ』は人物ではなく、夕立と虹をそれぞれ直接、音楽で表現しようとしています。興味深いことに、自然を直接表現しようとしたこの2曲は、人物や感情にスポットを当てている4曲と比べて、よりスケールが大きくドラマティックな音楽になっています。それを意識して作曲されたのかはわかりませんが、いずれにしても自然というものは、人間を遥かに超えたスケールで存在しているということなのでしょう。個人的に楽しかったのは『夕立』で、作曲者は夕立を嫌なものではなく「ちょっと嬉しいハプニング」として捉えているんじゃないかなと感じました。

締めの言葉は前作と同じになってしまいますが、このアルバムも、Sumika.さんのソプラノサックスを聴いているという感覚ではなく、気がついたらただただ音楽の世界に没頭していました。でもそれは存在感の有無という問題ではなく、Sumika.さんの演奏技術、音色、音楽性などが、水谷さんの楽曲の世界と完全にシンクロしている証しなのだと思います。このアルバムは、Sumika.さんと水谷健太郎さんという2人の大人の、2020年現在の等身大の姿なのです。

オンラインショップはこちら。
https://sumichannel.base.shop/items/35387184

前作『音ノ辞書』の記事はこちら。

野島レナ『風薫る -Day by day-』サクソフォン小品集

関西を拠点に活動しているクラシックのサックス奏者、野島レナさんの待望のソロアルバムが遂に発売されます。「遂に」というのも、もともと野島さんはデビュー当初、ソリストとしての活動が多かったので、とっくにソロアルバムを出していてもおかしくないイメージがあったからです。野島さんはその後、2012年に須川展也氏を音楽監督に迎えたプロジェクト「SAX PARTY!」を立ち上げられ、同世代のサックス奏者やアマチュア演奏家が一緒になって音楽の喜びを分かち合える場を作る活動に力を入れておられます。そんな彼女の初めてのソロアルバムは、ソリストとしての実力と音楽の楽しさが詰まった内容になりました。

「風薫る -Day by day-」と題されたアルバムは、「四季の風」というコンセプトで構成されています。春夏秋冬の4つの季節ごとに、ヴィヴァルディの「四季」を含めた4曲ずつが選ばれています。ユニークなのはその選曲。国内外の民謡、フルートやチェロのクラシック曲、オペラアリア、映画音楽やポップスなど、幅広いジャンルの様々な曲調がさりげなく混在しています。また、ヴィヴァルディをのぞくほとんどの曲は、タイトルに季節を示すような言葉が入っていないというのもポイント。音楽が必要以上にビジュアル化されることなく、気持ちのいいメロディーがただ風のように通り過ぎていくのです。全体を通して、サックス奏者なら感嘆するようなテクニックが満載で、それを鮮やかに吹きこなしているのは、さすが野島さん!と称えるべきなのでしょうが、アルバム全体を聴き終わるとそんなことは忘れていて、まるで日光浴を終えた瞬間のように頭は空っぽ、心はスッキリしていました。

個人的な話ですが、「SAX PARTY!」がスタートした当初、野島さんにインタビューをしたことがあります。彼女はずっと「一般の社会で暮らす人たちに、どうしたらもっとサックスの魅力を届けられるのか」ということを考えていました。その思いをひとつの形にしたのが「SAX PARTY!」でした。お客様ともっと近づくために、プログラム構成、ネーミング、料金設定など、演奏以外の細部にも常に気を配っておられます。設立当初から一貫してアマチュアサックス奏者との共演の場を設けているのも、「どんなレベルの人たちでも、一生楽しくサックスを吹くことができることを見せたい」という理想を持っておられるからです。このアルバムもまた、お客様や社会ともっと深く結びつきたいと願い続け、それを実践してきた野島さんだからこそ作ることができたんだと思います。野島さん、遂にできましたね!

コロナが収束して普通に街を歩けるようになったら、ぜひ一緒に外に持ち出して聴きたいアルバムです。きっと風が似合うはずだから。

詳細はこちら(ブレーン・オンライン・ショップ)
https://www.brain-shop.net/shop/g/gOSBR-37001/

平塚友美『コレクション』

世界でも例を見ないエスクラリネット専門のソロ奏者、平塚友美さんの初CDが届きました!クラリネット奏者としての確かなテクニックに加えて、エスクラならではの高音の快感もあり、そしてレパートリーが少ないジャンルだろうにどの曲も美しくて楽しくて、とっても素敵なアルバムです!

『COLLECTION』
●平塚友美(エスクラリネット)、宮庄紗絵子(ピアノ)
●2,750円(税込)+送料200円(品番:KTM-0001)
https://tomomiescla.thebase.in/items/26909172

【収録内容】
1. ミスターマウスのダンスミュージック/ダニエル・ドーフ
2. 2つのエステート・ガーデン/ジャレン・ヒンクリー
3. ヴェニスの謝肉祭/エルネスト・カヴァッリーニ
4. エスクラリネットとピアノのためのソナタ第2番/アルフレート・プリンツ
5. 4つの踊りの小組曲/ウィリアム・ボルコム

『交差点』という曲を作詞しました

昔ミタホールでライブをしてくれたことがきっかけで交流がある素敵なシンガーソングライター、椛島恵美さんの「あなたの想いを曲にします」という企画に参加して、僕が作った歌詞に曲をつけてもらいました。「人と人との出会いは交差点のようなもの」という常々感じている思いを詞にしたことろ、前向きで素敵なメロディーにしてくれました。企画は1コーラスのみというものだったんですが、リリックとして完成させておきたかったので、2番とラスラビまで作りました。

『交差点』
作曲 椛島恵美
作詞 柳楽正人

僕ら いつからだろう?
離れ離れになるのが怖くなったのは
旅立つ友 涙で送ったね
僕ら いつからだろう?
別れ 受け入れられるようになったのは
距離を超える絆もあったね

たとえ離れてても またその時が来るって
出会いや別れ 繰り返し気づいたんだ
人は必要なタイミングで出会うって
だから信じてるよ

僕の道は僕の夢に続いていて
その途中に君の道と交わるだろう
僕も目指す 君も目指す 未来を
今度また互いの道が別れるまで
交換しようよ 見つけた宝物
語り合おうよ 人生の交差点で

*****

僕はどうしてだろう?
君の思いをちゃんと受け止められなくて
心の波 チグハグだったね
僕はどうしてだろう?
いつも誤解されてるような気がしてて
何をしても打ち解けなかったね

強い思いだけじゃすぐに繋がれないって
一方通行の気持ち抱えたんだ
君と会うべき時は今じゃなくって
きっとこれからだね oh
 
僕の道は他の誰もたどれなくて
その先には何があるか判らないよ
楽しみだよ 君と出会える未来が
いつかまた互いの道が交わる時
重ねてみようよ 経験したことを
響き合おうよ 人生の交差点で

*****

僕の道は 僕の夢に続いていて
その途中に君の道と交わるだろう
僕は行くよ 君も行くよ 未来へ
ありがとう 出会えたことが 力になる
忘れたくないよ 一緒に見た景色
笑い合おうよ 人生の交差点で

【椛島恵美オフィシャルウェブサイト】
https://www.kabashimaemi.com/