2015-02-15 朴守賢 インタビュー 未公開2/2

  • 「暁闇の宴」の難易度

――課題曲Vは難曲というイメージがありますが、朴さんの曲もそうですか?

「今回の課題曲に関して言うと、技術的にも普通に難しいですよ(笑)。まあいわゆる現代曲の部類に入るんですけど、マーチに慣れ親しんでたり、例えば映画音楽ライクな曲とかに慣れ親しんでる方からすると『なんじゃこりゃ?』ってなると思う。でも多分そういう人たちは、毎年の課題曲Vに対してそう思ってるはずなんですよ。『課題曲Vはよくわからん』と。そういう意味では、僕もそこに数えられるような作品ではあると思います。でも、実はそんなに難しくないんですよね。よくよく見れば、整理はしやすいと僕は思ってるんです。そんなに奇抜なこともしてないし、例えば特殊奏法が満載とかそういうわけじゃないし、よくわからない打楽器を使っているわけでもない」

――「これは高校生に理解できるのかな?」と思って書いたりするんですか?

「課題曲だということを半分は意識したんで、そういうイメージもしたのはしました。多少ですけど。でも、それに引っ張られはしなかったです。引っ張られると作品自体が萎縮してしまうので」

――なるほど

「3年前、クラリネット協会の作品コンクールに出した曲があるんです(クラリネット・ソロのための「Yの肖像」。この曲で第3位入賞)。僕はクラリネット吹きだから結構自信があって、解説で豪語したんです。『自分がクラリネットをやっているからこそ、しばしば作曲家に見受けられる無理な運指とか変な跳躍とかがなく、楽器の機能性を存分に生かした曲です』と。なのですけど、公開審査だったので審査員の作曲家やクラリネット奏者が壇上で色々話しをしておられるのを聞いていると、むしろ奏者としては、今までにない高いハードルに出くわすと燃えると言われたんです。それを練習して練習してこなして、クラリネットというものの技術や曲がさらに上がっていくんだと。そう言われて、ああ!と思ったんです。それは僕の中で結構ガツンときたんですよ。それまであんまり思ったことがなかったので。今から思えば、僕はクラリネットをなまじ知っているがために、自分で安全な枠をくくってしまっていたと思うんですね。それは本当に、トンカチで殴られたような衝撃でした。やっぱりちゃんと音楽に取り組んでる人は、むしろ音楽のそういう発展を望むんだなと思って、それはすごく勉強になった」

――すごく貴重なお話ですね

「今回の課題曲も、学生とかを想像はしたけど、だからと言ってそこにアジャストさせるんじゃなくて、彼らがここならトライできるだろうという、頑張ったら飛び越えられるハードルを用意したつもりです」

――朴さんは以前から「今よりも半歩先を歩きたい」っていう話をされてましたもんね

「そうそう。でも今や日本の中高生は世界レベルですから、何でも吹けますからね。だから全然大丈夫だと思うんですけどね。ましてひと夏かけるわけですから」

――最近のコンクール事情には詳しくないのですが、課題曲Vを選ぶ団体は少ないんですか?

「まず、課題曲Vは中学校は選択できません。これは15禁なんで」

――15禁(笑)

「R-15指定なので(笑)。比較的、腕に自信のある学校が選ぶことが多いみたいですね。まあVに関しては、『毎年Vをやります』みたいな”Vファン”の楽団も多いです」

――そうした団体の充実した演奏を聴くことができれば、どれだけ取り上げられるかという数にはあまり関心がないですか?やっぱりたくさんやってほしいですか?

「いやいや、それはやっぱりやってほしいですよ。できるだけたくさんやっていただけると大変嬉しいです」

――来年はきっと、色んな「暁闇の宴」に会うために全国各地を飛び回ってることでしょうね (了)

朴 守賢(パク・スヒョン)

1980年2月、大阪生まれ。
大阪音楽大学音楽学部作曲学科作曲専攻出身。

吹奏楽、管弦楽、室内楽、民族楽器、合唱、歌曲、朗読音楽、等の作曲・編曲
TVドラマ、CM、映画、劇音楽等の劇伴音楽制作
クラリネット、リコーダー、雲南の横笛「巴烏」(Bawu)等の演奏
指揮、音楽指導
音楽を通した世界各地での芸術国際交流
等で活動中。