2008-10-24 お気に入りのクラシックを見つける方法

先日、おじいさんがヴァイオリンのコンサートのチラシを持ってお店に来られました。
そのチラシに書かれた曲目を指差しながら、演奏者は誰でもいいからこの曲のCDを下さいということだったので、すぐにいくつかの演奏者のものをお探ししてご希望の1枚を選んでいただきました。

これから開催されるコンサートのチラシを持ってCDショップに来られるお客様は、そのコンサートで演奏される曲をCDで聴いて予習しておきたいという方がほとんどです。
僕はおじいさんをレジまでご案内する間に「コンサートに行かれるんですか?」といわば予定調和の軽い気持ちでお尋ねしてみました。
しかし、ちょっと照れ笑いを浮かべたおじいさんの答えは意外なものでした。
「いやいや、このコンサートには行かないんですわ」
曰く、コンサートホールでせっかくチラシをもらっても、すぐ捨ててしまってもったいないから、チラシの中から気になる曲を見つけて、その曲をCDで聴くようにしているとのこと。
その意外な答えに、僕は思わず「なるほどぉ!」と大げさな相槌をうっていました。

関西で言えば大阪のザ・シンフォニーホールのような大きなホールでのコンサートに出かけると、入り口で当日のプログラムと共に、今後開催されるコンサートのチラシの束をどっさりと手渡されます。
そこには国内外のオーケストラ公演からアンサンブルやソロ・リサイタルに至るまで、様々な編成のコンサートのカラフルなチラシが入っています。
でも確かにおじいさんが言う通り、せっかくもらったそれらのチラシは、コンサートの合間にパラパラと眺めた後は、そのままゴミ箱に直行というパターンがほとんどです。
僕はおじいさんの話を聞いて、そんなチラシの活用の仕方もあるんだなぁと感心したのでした。

様々な場所からあらゆる情報が手に入るようになった現在ですが、クラシックに関して言えば主な情報源は今も昔もさほど変わってないのかな、というのがお店での実感です。
新譜でもないCDが突然1日に何枚も売れたり、お問い合わせが集中したりすることがあるのですが、そんな時はほぼ間違いなく地上波テレビで紹介された時です。
そしてその情報の出どころは、数ある番組の中でも「題名のない音楽会」「芸術劇場」「N響アワー」といった特定の番組であることが多いのです。

それは新聞や雑誌といった印刷物でも同じで、専門誌「レコード芸術」が最も影響力が大きいのは当然としても、それ以外である程度の反響があるものとなると意外と限られてきます。
コンサートのチラシも、冒頭のおじいさんのような使い方は別としても、コンサート前の予習というケースを含めれば、印刷物の情報源としては定番のひとつと言えるでしょう。

言い方を変えると、クラシックに興味があるけどどこから手をつけていいのかわからないという人にとっても、そうした昔からの定番の情報源が絶好の入り口になるということです。
そこで今回は、その情報源をいっぺんにまとめて、しかもタダで手にすることができる、取っておきのアイテムを紹介したいと思います。
それは「月刊ぶらあぼ」というクラシック専門の無料情報誌です。
コンサート情報を中心としたA5サイズの小ぶりな雑誌ですが、毎月200ページを越えるボリュームで無料とはとても信じられないくらい超充実の内容です。

メインとなる情報は全国のコンサート・スケジュールですが、CD鑑賞という観点だけに絞って読んだとしても、豊富な新譜CDレビュー、主要なテレビ&ラジオのクラシック関連番組の放送予定など充分すぎるほどの情報が得られるのがすごいところ。
またコンサート・スケジュールも実際にコンサートに行かなくても、プログラムを眺めて気になった曲をCDで買ってみるという、例のおじいさんのような使い方もできちゃいます。
フルカラーのインタビューページも充実しているので、好みのイケメン・アーティストも見つかるかもしれません。

自分だけのお気に入りのクラシックを、自由に気軽に見つけることができるヒントがたくさん転がっている「月刊ぶらあぼ」、本当におすすめです。
全国を網羅とはいかないようですが、主要なCDショップやホールの他、チケットぴあにも置いてあるそうなので、お近くにある方はぜひ探してみて下さい。
ただパラパラと眺めてみるだけでも、きっと今よりもクラシックが近いものになるハズです。

追伸:
「ぶらあぼ」には、ピアニストの廻由美子さんの「メグリンのHappy Tune」というエッセイが掲載されています。
今年の12月号で90回を数える人気の連載で、演奏家の立場から音楽に対する厳しく温かい目線で、クラシックの素晴らしさや深さをわかりやすく伝えてくれる素敵なエッセイです。
僕がCDショップの立場からクラシックにまつわる文章を書くと決めた時に、理想の形としてイメージしたのがこのエッセイで、憧れの存在なのです。
「ぶらあぼ」を手にすることができたら、ぜひぜひ読んでみて下さい。

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