2009-12-01 そういう人間のひとりになりたい

クラシック音楽を題材としたマンガとしては異例の、国民的といえるほどの人気を獲得した「のだめカンタービレ」の連載が遂に最終回を迎え、先日最終巻の単行本が発売された。
正直、最終回の最後のページを読み終わった今も、終わった実感があまりしない。
これからもまだ、のだめたちの成長を見続けていられるんじゃないかと思ってしまう。
12月と来年4月には映画の公開が控えているから、まだまだのだめブームは続きそうだけど、のだめの住む世界に通じる入り口は、いったんここで閉じられた。
二ノ宮先生、8年間本当にお疲れ様でした。
楽しい時間をたくさん与えてくださって、ありがとうございました!

のだめカンタービレには、数々の記憶に残る名場面や名言があった。
僕が最も印象に残っているのは、音楽評論家の佐久間さんが言った言葉だ。
指揮者としての成功を夢見る音大生、千秋真一の才能に惚れた佐久間さんは、彼が指揮したオーケストラ公演をクラシック雑誌で大きく取り上げたり、海外留学のために現地情報を調べてアドバイスしたりするなど、千秋の活動を全面的にバックアップしていた。
そして「どうしてこんなによくしてくれるんですか?」という千秋の問いかけに、佐久間さんはこう答える。

「ブラームスにコッセルやヨーゼフがいたように 歴史に名を残す音楽家には才能だけじゃなく 人との大事な出会いがあるものさ ボクもそういう人間のひとりになりたいんだよ」

「ハハハ なんてね」と茶化したように笑う佐久間さんを、千秋は表情を崩さずじっと見つめているという、喫茶店でのひとコマだ。
僕が最も印象に残っているシーンが、なぜ主人公であるのだめや千秋ではなく、佐久間さんなのか。
それは、僕もそうなりたいと願っているからにほかならない。
僕の「クラシック・サポーターになりたい!」という気持ちは、クラシック愛好家に対する思いであるが、それと同時に音楽家に対するサポーターでありたいとも思っている。
佐久間さんのように自分が見込んだ音楽家を支援し、その音楽家を紹介することによってクラシック愛好家の楽しみの手伝いができれば、こんなに素晴らしいことはないと思う。

ところで、酒井若菜という女優さんをご存知だろうか。
僕はテレビドラマを見ないから、失礼ながら酒井さんがどういうご活躍をされている人か知らないけれど、先日彼女のブログが、あるインターネット・メディアに紹介されていた。

酒井さんがまだ新人の頃、テリー伊藤さんが出演する番組の雑用アシスタントをすることになった。
そしてある日の収録中、視聴者からの悩みに答えるコーナーで、テリーさんが突然、本来テレビに映ってはいけない雑用アシスタントの彼女に質問を振り、その答えを気に入ったテリーさんの一存でその日からMCアシスタントに大抜擢、そこから彼女の芸能界での成功が始まったそうだ。
その後もテリーさんは常に酒井さんを直接的、間接的に応援し続けているそうで、彼女のブログはそんなテリーさんに深い感謝を表した文章だった。

私は休業あけ。仕事もうまくいかず、俯く日々。
姉から電話がきました。
「今、テリーさんがあなたの名前をテレビで出してくれたよ」
「え?なんて?」
「テリーさんの先見の明についての話をしてたらね、テリーさんが『俺が見つけた子はみんなすごいんですよ、酒井若菜とかね』って言ってた!」
・・・ポロポロ。
当時の私は「酒井若菜を見つけたんだ」と引き合いに出したところで「あの酒井若菜を」とはとても言えないくらいの存在(今もだけど)。でも、当たり前のように名前を出してくださっていたことが、信じられないくらい嬉しかった。
そして、まさかの数日後。「あ、うん」以来、テリーさんと偶然テレビ局で会いました。
私の控え室を、別の番組でいらしてたテリーさんが訪ねてきてくださったのです。
顔を見た瞬間に号泣した私。
ラジオの件とテレビの件のお礼を言うと、テリーさんは「当たり前のことを言っただけだよ。酒井若菜に決まってんだろ」と笑いました。
泣き止まない私に「よく頑張ってるな。いいぞ」と声をかけてくださいました。
そして、「良かったな」と。

数年に一度、極端に自信がなくなった時、必ず目の前に現れてくださるテリーさんは、私にとっての救世主。
本当に、嬉しい。


心がおぼつかない夜に(酒井若菜オフィシャルブログ「ネオン堂」)
http://ameblo.jp/wakana-sakai/entry-10394638660.html

僕はこのブログを読んで、すごくうらやましかった。
酒井さんが、ではなく、テリーさんがである。
テリーさんは、自分の持っている影響力を正しく使って彼女を成功に導いた。
ある方面に影響力を持った人が、自分が信じた才能のためにその力を使う。
これはまさに、僕がやりたいことそのものなのだ。

「のだめカンタービレ」が連載された8年の間、のだめの世界の人たちにも僕の人生にも大きな変化があって、その変化の中で一緒に成長していった。
「のだめカンタービレ」の登場人物たちは、もう僕たちには見ることのできない世界に行ってしまったけれど、その世界の中で彼らはこれからも成長し続けていくことだろう。
僕は今はまだ、自分のコネクションを全く使いこなせていない”宝の持ち腐れ”状態だけど、僕だってもっと成長していかなければならない。
そしていつかきっと、僕も佐久間さんやテリーさんのような人になれると信じている。

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