自分の「しるし」を発信する

キングコング西野さんがまた面白いことやろうとしておられますね。しるし書店。誰かが付箋を貼ったり線を引いたりした本を扱う、オンラインの古本屋だそうです。本来であれば書き込みされた本は価値が下がりますが、もしそれが有名人とか自分がよく知っている人が読んだ本だったら、その人がどんなことを考えているのかを知る手がかりになるので、むしろその「しるし」に価値があるという考え方です。面白いですねぇ。

これ、音楽家にも同じことが言えるなぁと思っていました。自分の演奏やコンサート、あるいは自分自身にどれだけ「しるし」をつけることができるのか。もちろんその「しるし」を演奏そのものでつけられるのが音楽家にとっての理想ですが、もっとパーソナルな要素があってもいいと思ってるんです。

僕がCDショップから音大に転職したきっかけのひとつは、店内で行っていた公募コンサートでした。プロアマ問わず審査なしで出演してもらっていたんですが、普段から超一流の名盤名演奏を聴いているだろうお客様が、失礼ながら超一流から比べると「そこそこ」なはずの演奏を、ニコニコしながら聴いている。これってどういうことだろうって、ずっと不思議に思っていました。そこで僕は「音楽とは人の営みである」という原点を見つけました。音大を出たての若いお姉さんが真摯に演奏している姿、アマチュアの人たちがたどたどしく演奏している姿、レベルとか関係なく、その全てが人の営みでした。僕はもっと人にフォーカスした仕事がしたいと思って転職しました。

自分が辿ってきた音楽の道のり、コンサートの企画の意図、その曲に対する思い、何でもいいんだけど、音楽家のみんながもっともっと自分の「しるし」を発信できるようになったら、もっともっと音楽への入り口が広がったり理解が深まったりするのになぁと思ってます。