音大生が卒業後の進路を考えるとき、音楽を続けるか辞めるか、0か100かの究極の選択をしてしまっているような気がします。本当はそんなことはなくて、仕事をしながらでも続けていけます。その代わり、音大レベルのクオリティを維持しならが活動するのはかなりストイックな道ではありますが、でも少なくとも0ではない。
逆に音楽で食べているという人の中身をよく見ると、実態は講師活動と演奏活動の兼業で、必ずしも全員が自分の望むバランスではないように感じます。ミタホールで多くの若い演奏家を見てきていますが、自分たちでスケジュールを決められる自主公演であっても、仕上がり具合が70%ぐらい(一番ひどいケースは譜読みがまだできてない状態)で舞台にかけてしまって、その曲はそれっきりオシマイという人が結構います。自分が本当にやりたいことをするために自由業を選んだはずなのに、それができないジレンマ。いつしか感覚が麻痺してそれに気づかなくなっている人もいるかもしれないし、その気持にフタをして気づかないフリをしている人もいるかもしれません。
普段は音楽とは無関係の仕事をしながら、年に1回でも本当にやりたい音楽を時間をかけてやる非職業音楽家と、音楽の業務に忙殺されて自分が望むクオリティや内容の活動ができない職業音楽家。どちらが幸せなんだろう?って時々思います。
僕はこの前のコンサートで、普段は全く楽器に触らなくて仕事にまみれていても、コンサートに向けてコンディションを整えながら、身の丈にあった範囲で曲を選び、感情を注ぎ込む作業を丁寧にやっていけば、非職業音楽家でもそこそこのことはできるんだよということを示したかった、というのは少しあります。まあでも1日30分ぐらいしか練習しなかったし、偉そうなことは全然言えないけど。それに、僕がそれを見せなくても、非職業音楽家の理想形はみこさんなんですが、その話はまた別の機会に。