2010-06-23 若い指揮者や若いオーケストラは、拍手に応える一連のマナーがぎこちない。

若い指揮者や若いオーケストラは、拍手に応える一連のマナーがぎこちない。僕はそういう光景を見るのが恥ずかしくって直視できないんだよなぁ。ああいう作法って教わったりしないのかな?

オーケストラの最後の一音がホールに鳴り響く。
最後の響きが消えるのを待ちきれないように、満員の観客から割れんばかりの拍手が起こり、指揮者はふと我に返ったように指揮棒を下ろす。
汗だくの顔ににっこりと満足の微笑を浮かべながら、オーケストラを起立させ、ヴァイオリンの先頭にいるコンサートマスターとがっちりと握手をかわす。
そしてゆっくりと時間をかけて振り返り、ブラボーの歓声に向かってお辞儀をして、袖に下がる。

指揮者が下がったのを確認してオーケストラが座り、拍手に応えて再び指揮者が登場する。
そして指揮者は、メインの曲で最も目立つソロを担当した楽器の奏者を、1人で立たせて讃える。
次にフルート、オーボエ、クラリネット……と、各パートを順番に立たせる。
木管楽器、金管楽器、打楽器の順番に一通り立たせたら、弦楽器を一斉に立たせてオーケストラ全員が起立する。
指揮者がお辞儀をして舞台袖にさがり、オーケストラは再び座る。

鳴り止まない拍手に、三たび指揮者が登場。
今度はオーケストラの団員が拍手をしたり足を踏み鳴らしたりして、指揮者を讃える。
指揮者はオーケストラを立たせようとするが、オーケストラは拍手をしたまま立たない。
ちょっと困ったような笑みを浮かべた指揮者は、胸に手を当てて感謝の意を表し、客席にお辞儀をした後でやっとオーケストラ全員を立たせることができ、再びお辞儀をして舞台袖に下がる。

そうやって何度か指揮者が出たり入ったり、オーケストラが立ったり座ったりをくり返しても、拍手が一向に鳴り止まないときには、指揮者が下がった後、頃合を見てヴァイオリンの先頭に位置するコンサートマスターが客席にお辞儀をして、オーケストラに解散を促す。
もう本当に終演したのだということがわかると、人々はようやく客席を後にする。

これは、一般的に行なわれているオーケストラのステージマナーの一例だ。
僕の情報が正しければ、割ときっちりとした「型」があるのにもかかわらず、オーケストラ全体でこの拍手のシーンを練習しているという話は聞いたことがない。
誰かに直接教わるでもなく、見よう見まねで先輩たちから引き継いでいたものなのだと思う。

ここ最近、若い指揮者と若いオーケストラのコンサートを何度か見る機会があった。
まだ充分な経験がないのだろう、この拍手のマナーが実にたどたどしい。
コンサートマスターと握手をしてみても、お互いにどこかぎこちない。
オーケストラを立たせることを忘れて、自分だけお辞儀をしていた指揮者もいたっけ。
伝統的な「型」をマネしたいと思っていても、上手くできないでいる光景がくり広げられると、見ているこっちが恥ずかしくて直視できない。
さすがにプロのオーケストラではやらないにしても、音楽大学で直接ステージマナーを教える授業とかあってもよさそうなものなのに。