僕は平成元年に京都芸大に入学しました。高校は普通科だったので、吹奏楽が盛んな地域だったとはいえ、クラシック音楽の業界とは無縁の環境で過ごしてきました。クラシック業界を初めて肌で感じたのが、大学に入った平成元年であり、僕のクラシック界でのキャリアはそのまま平成の30年間と重なっています。演奏者としては20余年のブランクがあるので、演奏レベル的には完成形と呼べるものではないけれど、30年間で経験してきたひとつひとつの点を繋ぎ合わせて線にしながら制作しているこのアルバムは、まさに平成を集大成した作品になるはずです。
ちなみに大学のときの僕の学年は、音楽学部60人中で男が9人という学年でした。作曲科の同級生が卒業時に「9人の男のためのラプソディー」という曲を作ってくれて、男9人で演奏しました(ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、トロンボーン、ホルン、チューバ、テノール、バリトン、ピアノ)。僕はその曲を今でもすごく気に入っていて、平成元年に出会った9人が平成の最後にその曲を再演する、という妄想をしていました。残念ながら作曲者の許可が下りなかったので、妄想のままになってしまいましたが…。幸い男9人は全員、今でも音楽に関わっているので、そのうち違った形でチャンスが来るんじゃないかなと思っています。