「この名前に込めた気持ちは今も変わっていません」
と言い切ってしまいましたが、正確にはその気持ちの範囲が、当時から少し拡大しています。
今回のCDで僕は「音大を出て就職した人でも、これくらいは音楽と付き合えるんだ」というモデルケースになりたいと思っています。就職は、音楽を続けるか辞めるか、100かゼロかの究極の二択ではない、と思っています。
僕は音楽関係の仕事をしていたことが多いし、今は個人事業で割と自由に動ける仕事をしてるから、例外のように思われるかもしれないですが、それでもササヤに入社して以降、仕事を転々としつつもずっと契約社員や正社員として働き続けた「一般企業に就職した社会人」です。連日夜遅くまで残業が続いた仕事、朝11時から夜11時というシフトが基本だった仕事、遅番→早番というシフトの時には、家に帰ったら寝る時間しかない生活だった仕事。家に帰ると何かをする気力は残っていないという時期もありました。働きながら自分が望むレベルの音楽活動を続けることは、言うほど簡単じゃないということは、実感としてわかっています。
今回のレコーディングも、決して充分な練習時間が取れたわけではないです。ミュートをつけて深夜に1時間練習できればいいほう。あとは毎日毎日、ただひたすら楽譜を眺め、頭の中で何度も何度も曲をリピートして、納得できる理想の音楽になるまでイメージを膨らませ続けました。
僕の音源を聴いて「50歳を目前にしてこれぐらいのものを残せるんだったら、ちょっと自分の未来が楽しみになるな」って思ってくれる人がいるなら嬉しいです。もし、自分もレコーディングをしてみたい、という人がいたら喜んで協力します。今はコンサートだけじゃなくて、色んな表現の手段があります。 一緒に未来を作っていきましょう。 僕たちは音楽を諦めた人なのではなくて「音楽もある」のだから。