「カルテは演劇なのですか?」
カルテは確かに演劇のスタイルを借りていますが、主役はあくまで歌そのものであり、正確には「ストーリー仕立てのコンサート」です。占いというシチュエーションを設定し、占い師が依頼人のカルテを読み上げることで、これから歌うオペラアリアに至るまでのあらすじと、歌詞の内容を説明しています。そして、占いの結果を伝えるという形で、その後のストーリーも説明することが可能になっています。
「カルテはオペラとは違うストーリーなのですか?」
カルテはオペラのあらすじには手を触れません。占い師とのやり取りは、必ずオペラのあらすじを壊さない場面に存在しています。どうしてもリアルタイムで占いに行けない場面もあるのですが、色んな手段を使ってストーリーの崩れを回避しています。カルテを見て、いつか本物のオペラを見たくなったとき、正しいあらすじを持って行ってほしいからです。ただし歌曲の場合はもともと物語ではないので、前後の話は創作しています。
「カルテはストーリーに合わせて選曲しているんですか?」
カルテは出演者が歌いたい曲を持ち寄っています。クラシックに馴染みがない方を想定したコンサートでは、よく知られた曲を歌ったり、映画音楽やポップスをアレンジしたりすることがよくありますが、カルテは選曲で間口を広げるのではなく、あくまで自分たちが勉強してきた(勉強したい)曲を使って、なおかつ誰にでも楽しんでもらえるコンサートを作りたいと考えています。毎回みんな、他の人が何を歌うか知らずに選曲するので、出てきた曲を見て全体のストーリーの辻褄を合わせるのが大変だったりします。(ソプラノ2人がどちらも連隊の娘のアリアを選んだり、着替えの関係でボエームの2つのアリアの時系列が逆になったり)
「そもそも、カルテはなぜ演劇のスタイルを借りているのですか?」
例えばそれは、作曲家や歌手に対して「あなたはなぜ詩を朗読するのではなく、それにメロディーをつけているのですか?」と質問するのと似ていると思います。そこに、朗読するだけでは得られない感動があるからです。カルテに演劇のスタイルを用いているのは、単に司会者があらすじを説明するだけでは得られない臨場感や、占い師の視点からの、オペラとはまた違った感情を伝えることができると信じているからです。たとえそれが下手くそな芝居だったとしても。また、実際にそのような感想をいただいていることが支えになっています。演劇の力って凄いな!と毎回こちらが感動しています。