2009-03-14 クラシックのジャンル

CDショップのクラシックコーナーの並べ方には、大きく分けて2種類のやり方があります。
ひとつは作曲者のアイウエオ順(又はABC順)に並べるやり方。
まず作曲者順にずらっと並べてしまい、それぞれの作曲家の中で、交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲……とジャンル別に仕切っていきます。
例えばチャイコフスキーのコーナーなら、まず交響曲の第1番から第6番が並び、次に「1812年」「ロミオとジュリエット」などのオーケストラ曲のCDが続き、その次にピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲といった協奏曲が並ぶといった具合です。

もう一つの並べ方はさっきとは逆パターンで、まず交響曲、管弦楽曲、協奏曲、室内楽曲……とジャンル別にコーナーを分け、その中で作曲者順に並べるというやり方です。
その場合はまず交響曲のコーナーがあり、その中でヴォーン=ウィリアムス、シベリウス、シューベルト、シューベルト、ショスタコーヴィチ、チャイコフスキーなどと、作曲者順に交響曲だけがずらっと並んでいくのです。

僕が今働いている店は、後者のジャンル順の並べ方を採用しています。
クラシックファンと言ってもオーケストラ曲をメインに聴く人、ピアノ曲しか聴かない人、オペラや声楽が好きな人など、それぞれ得意とするジャンルが決まっていることも多いので、ジャンル別に並べておくと、自分の好きなジャンルだけをざっくりまとめて一望できるというメリットがあります。
また「今度ピアノの発表会があるんだけど、何かいい曲ないかなぁ」という探し方をされる場合にも、ピアノ曲だけがまとまっていた方が、作曲者順になっているよりも便利です。

しかしジャンル別の並べ方は、探している曲がどのジャンルかわからない人にとっては、どこを探せばいいのか見当がつかないというデメリットがあります。
一般的には作曲者順の方が初心者に優しく、目的のCDも探しやすいとは思うのですが、特定のジャンルだけを見たい人や、目的買いではなくふらっと来た人にはあまり親切じゃない場合もあるので、どちらにしても一長一短といったところです。

クラシック曲のジャンルを確認するとき、一番わかりやすいのは交響曲と協奏曲です。
若干の例外はありますが、交響曲なら「交響曲第1番」、協奏曲なら「ヴァイオリン協奏曲」「ピアノ協奏曲第23番」などと、ほとんどの曲は曲名にジャンル名そのものが入っているからです。
他にわかりやすい曲名に「ピアノ三重奏」「弦楽四重奏」「クラリネット五重奏曲」など、「××○重奏」というものがあります。
「○重奏」の○の中に入る数字が演奏者の数で(だいたい3~8ぐらい)、少人数編成の室内楽曲ということを現しています。
他にも「○○ソナタ」という曲名なら、○○という楽器のソロ曲であることが多いです。
例えば「ピアノ・ソナタ」とあればピアノ独奏曲ですし、「ヴァイオリン・ソナタ」ならピアノ伴奏付きのヴァイオリン独奏曲といった具合です。
(ピアノ伴奏が付かない場合は「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」などという表記になります)

気をつけなければならいのが、副題や通称がついている曲です。
例えばベートーヴェンの「運命」という有名な曲。
クラシック初心者には、それが「ベートーヴェンの交響曲第5番」に付けられた副題だとわからないかもしれません。
交響曲はジャンルで言うと管弦楽曲になるのですが、ガイドブックやCDショップの中には管弦楽曲から切り離し、交響曲を独立した別のジャンルとして分けていることもあります。
「運命」の本名が「交響曲第5番」だと知っていれば、交響曲と管弦楽曲が分かれていてもどちらを探せばいいか迷うことはありませんが、それを知らずに管弦楽曲のコーナーをいくら探しても、「運命」を見つけることはできないでしょう。

この他にも「新世界より」「クロイツェル」「トルコ行進曲」などなど、副題がついているクラシック曲は数多くあります。
それぞれ「ドヴォルザークの交響曲第9番」「ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番」「モーツァルトのピアノ・ソナタ第11番」というのが正式名称になっています。
副題だけだとどこを探していいかわからない曲でも、正式な曲名がわかると、どのジャンルかすぐにわかるんじゃないかと思います。

そんなわけで、CDショップでクラシック曲を探すときには、副題や通称の他に、正式な曲名や、作曲者、調性、作品番号などできるだけ詳しい情報があるといいでしょう。
クラシック専門フロアと言っても、スタッフ全員が詳しいというわけにはいかないので、初々しそうなアルバイトスタッフに助けを求める際には、それらの情報をできるだけたくさん教えてやって下さい。
あの有名な「第九」(ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱つき」)でさえ、「ベートーヴェンの『合唱』下さい」と言われて反射的に合唱コーナーを探しに行き、「ないない!」とうろたえていたスタッフもいますので……。