関西を拠点に活動しているクラシックのサックス奏者、野島レナさんの待望のソロアルバムが遂に発売されます。「遂に」というのも、もともと野島さんはデビュー当初、ソリストとしての活動が多かったので、とっくにソロアルバムを出していてもおかしくないイメージがあったからです。野島さんはその後、2012年に須川展也氏を音楽監督に迎えたプロジェクト「SAX PARTY!」を立ち上げられ、同世代のサックス奏者やアマチュア演奏家が一緒になって音楽の喜びを分かち合える場を作る活動に力を入れておられます。そんな彼女の初めてのソロアルバムは、ソリストとしての実力と音楽の楽しさが詰まった内容になりました。
「風薫る -Day by day-」と題されたアルバムは、「四季の風」というコンセプトで構成されています。春夏秋冬の4つの季節ごとに、ヴィヴァルディの「四季」を含めた4曲ずつが選ばれています。ユニークなのはその選曲。国内外の民謡、フルートやチェロのクラシック曲、オペラアリア、映画音楽やポップスなど、幅広いジャンルの様々な曲調がさりげなく混在しています。また、ヴィヴァルディをのぞくほとんどの曲は、タイトルに季節を示すような言葉が入っていないというのもポイント。音楽が必要以上にビジュアル化されることなく、気持ちのいいメロディーがただ風のように通り過ぎていくのです。全体を通して、サックス奏者なら感嘆するようなテクニックが満載で、それを鮮やかに吹きこなしているのは、さすが野島さん!と称えるべきなのでしょうが、アルバム全体を聴き終わるとそんなことは忘れていて、まるで日光浴を終えた瞬間のように頭は空っぽ、心はスッキリしていました。
個人的な話ですが、「SAX PARTY!」がスタートした当初、野島さんにインタビューをしたことがあります。彼女はずっと「一般の社会で暮らす人たちに、どうしたらもっとサックスの魅力を届けられるのか」ということを考えていました。その思いをひとつの形にしたのが「SAX PARTY!」でした。お客様ともっと近づくために、プログラム構成、ネーミング、料金設定など、演奏以外の細部にも常に気を配っておられます。設立当初から一貫してアマチュアサックス奏者との共演の場を設けているのも、「どんなレベルの人たちでも、一生楽しくサックスを吹くことができることを見せたい」という理想を持っておられるからです。このアルバムもまた、お客様や社会ともっと深く結びつきたいと願い続け、それを実践してきた野島さんだからこそ作ることができたんだと思います。野島さん、遂にできましたね!
コロナが収束して普通に街を歩けるようになったら、ぜひ一緒に外に持ち出して聴きたいアルバムです。きっと風が似合うはずだから。
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