なぜかは分からないけど、僕は昔から多重録音に対する憧れがあります。初めて多重録音をしたのは中学生のとき。家にあった、英会話教材だったかの専用カセットデッキを使うと、すでに録音したテープの上から、重ねて別の音を録音できるということを発見しました。そこで僕が録音したのが、ディープ・パープルの「天国への階段」のイントロでした。ギターは持っていなかったのでキーボードで演奏し、印象的に使われているリコーダーアンサンブルを耳コピして、3パートを別々に吹いて重ねました。多分誰にも聴かせたことがない、自分だけの楽しみでした。
大学を卒業してから、一般にも手が届く価格で普及し始めていたMTR(マルチトラックレコーダー)を買いました。いつかホルン四重奏とかを自分の演奏だけで録ってやろうと思っていたのですが、ピッチやテンポの揺れを合せるのが想像以上に難しく、すぐに諦めて宝の持ち腐れになってしまいました。いや、その後、プーランクの無伴奏合唱曲のためのミサ曲を多重録音で8声部入れてハモらせたことがあったっけ。音痴が8倍になった音源だから、それこそ誰にも聴かせられないお遊びだったけど、あれは楽しかったなぁ。
そんなわけで、ホルンとピアノを多重録音的に録っている今のレコーディングは、子どもの頃から憧れていたことだったので、すごくワクワクしています。