アルバムタイトルに「How to live with music」というキーワードが思い浮かんでいます。このレコーディングは、今の僕が示すことができる「音楽と暮らす方法」です。演奏を生業にせず、20年間ほとんど楽器に触れることがなかった僕でも、スタジオレコーディングという形でなら、自分の音楽を残せるかもしれない。おそらく最初で最後の演奏家としての証です。
もう今の僕には、基本的なホルンのレパートリーを演奏できるスタミナはありません。だからホルンより少し音域が低い楽器の曲から、今の自分にも無理なく演奏できる、身の丈に合った曲を選んでいます。学生時代に勉強したレパートリーが演奏できなければ意味がないと思う人もいるかもしれません。でもこれが僕の考える「音楽と暮らす方法」です。
ピアノの奈良綾香さんには無理をお願いして、ピアノパートは電子ピアノで別録りしています。後からホルンだけをワンフレーズずつ何度も録り直し、さらに録った後にタイミングやピッチ修正を加えるためです。現役のプレーヤーが同じ曲をレコーディングしたら、ピアノと一緒に演奏して30分で録り終わるでしょう。こんなやり方は不自然だという人もいると思います。失うものが多いことも承知しています。でもこれが僕の考える「音楽と暮らす方法」です。
あと数回のレコーディングを経て、夏ぐらいには完成させたいなと思っています。