ESCOLTAメジャーデビューアルバム・レビュー

今日はESCOLTAのメジャーデビュー記念日ということで、デビュー当時のブログ記事を掲載しておきます。

2007-09-09: ジャンルを超えた4人の超個性、ESCOLTAデビュー!

台風が関東地方に直撃した9月6日、STB 139(六本木スイートベイジル)で行なわれた、「ESCOLTA(エスコルタ)」のデビュー・コンベンションに行って来ました。エスコルタは「和製イル・ディーヴォ」とも呼ばれ、本格デビュー前にもかかわらず既に固定ファンも付きはじめているという、注目のイケメン男性4人のヴォーカル・ユニット。最初にサンプルを試聴した時は「和製イル・ディーヴォというより、クラシカル・ゴスペラーズなのかな?」なんて話をしていたのですが、彼らのパフォーマンスを生で見た後では、そのどれでもない確かな可能性を感じ取ることができました。

エスコルタはクラシック・テノール、ミュージカル・テナー、ポップス・ヴォーカル、バリトンという異なるジャンルのヴォーカルをミックスさせた、ジャンルを超えたユニークなグループです。実は事前にサンプルCDで聴いた時には、その差があまりはっきりと感じられない部分もあったのですが、実際にステージで聴いた4人の異なる声は、ほとんど融合していないと言ってしまえるぐらい、それぞれに強い個性を持っていました。しなやかで独特の色気ある声を持っているポップス・ヴォーカルの結城安浩、一声で場の空気を変えてしまう若々しく輝かしいクラシック・テノールの田代万里生、舞台で鍛えられたストレートで力強い地声を持つミュージカル・テナーの山崎育三郎、そして張りのある低音で全体の輪郭を形づくるバリトンの吉武大地。この4つの個性の融合と乖離に僕は非常に興味を覚えました。

今回僕はエスコルタのコンベンションに、クラシック担当として招待していただきましたが、彼らの音楽をクラシック(クロスオーバー・クラシック)とカテゴライズするのが正しいのかどうかはわかりません。11月発売のデビューアルバムに収録の楽曲は全てオリジナル曲、作詞陣は谷川俊太郎、石田衣良、阿木耀子、阿久悠など、通常のポップス歌手並の強力な布陣です。彼らの音楽をクロスオーバー・クラシックと呼ぶのは難しいのではないかと僕は考えています。かつてクロスオーバー・クラシックがクラシックの枠を壊したのと同じように、エスコルタはクロスオーバー・クラシックの枠をも壊してしまうパワーを秘めているように思うのです。

当日のライブでとても印象的だったのが、彼らの歌に対するひたむきさでした。傍から見ていると青臭いと思えるほど、彼らは音楽の力を無垢に信じて全てを注ぎ込んでいました。象徴的だったのが、阿久悠の遺作となった「愛の流星群」。この曲の一番のサビに「凍え死んでも悔いない想いで 時を待てば心たたく音楽」という一節があります。この「音楽」という言葉だけが、妙にリアリティを持って突然浮かび上がって聴こえてくるのです。これはまさに阿久悠マジックと言えるのでしょうが、僕は彼らが今一番リアルに感じられる言葉は「愛」ではなく「音楽」だからなのだと理解しました。若き4人の音楽の未来に栄光あれ!(なぎら)

●「愛の流星群」/ESCOLTA
●VICC-60600 ¥3,045(税込)
●11月14日発売予定