出場者がチケットを手売り販売すること

元ボクシング世界王者の人が、SNSを活用したチケット販売テクニックのセミナーを開催するというニュースをボクシング専門誌が大々的に取り上げたところ、元ボクシング日本王者が「選手の商品価値を下げるな。その仕組作りは業界がやるべき。世界王者になってもチケット手売りなら誰もなりたがらない」と噛み付いたという話。

ただし怒りの矛先はセミナーを開催する元世界王者にではなく、本来チケット販売の努力しないといけない業界の専門誌が、選手のチケット手売りセミナーを賛美していることに腹を立てている、ということらしい。業界側(裏方)にいる人間としてはとても耳の痛い話。この一件を伝えているブログの最後に綴られている以下の引用は、「ボクサー」を「ミュージシャン」に置き換えても、リアルに受け止められると思う。

 なぜなら多くのボクサーたちは若いからだ。目先の小さな金に必死になるより、いましかできない経験を手に入れた方がずっと大きな財産になるし、大人が考える理屈に惑わされず、スポーツや恋愛に本能で打ち込むことは若者の特権ではないか。いまセミナーを受ける側になるなら、将来セミナーをやる側にまわるような発想でいた方がいいんじゃないかと個人的には思う。

ボクシングビジネスはアスリートではなくビジネスマンが考えるべきもので、そのセミナーがあるなら対象は後輩ボクサーよりもプロモーターのはずだ(なぜそれをやらない?)。プロボクサーは「プロ」のボクシング屋であって、チケット売りの達人ではない。わざわざ過酷なことやってるのだから、自分の試合を見せて、人に金を払ってもらうことにプライドを持てばいいし、できるだけ強い奴とやって、ひとりでも見た観客に「凄かったね!」と言われれば、売れたチケットの枚数では計れない評価となる。

僕は東京ドームで無名キックボクサーとして試合をしたが、つまらない試合で誰ひとり沸かせてはいなかった。一方、数少ない経験だが、観客が300人ぐらいしかいない会場で、サインの行列ができるぐらい沸かせたことがあって、そのときだけ「役割を果たせた」気がした。同時に、それまで客のことを何も考えていなかった自分を恥じた。僕は格闘技では「プロ」ではなかった。だから、なおプロ意識の強いボクサーが大好きだ。彼らにはプロのプライドを高めて、かっこよくいてほしい。

チケット手売り論議!木村悠のセミナー商売 × 土屋修平のプロ意識|猫ボク。CAT,BOXING and I

僕もミュージシャンに胸を張ってそう言えるようにがんばらないと。