「時空の難破船」終演

バタバタしていたので、ちゃんと報告できていませんでした。子供たちがプロデューサーを体験する「プロダクションさきら」第3期の成果発表公演「時空の難破船-ロストシップ-」が1月26日に終演しました。当日の滋賀は大雪が降り、しかも開演前に大津駅で人身事故が発生するという状況でしたが、幸いほぼ予定通りのお客様にご来場いただきました。

子供たちがプロデューサーになるという建前ではありますが、10回の講座の中だけでできることは限られている(というかほとんどできない)わけで、「豪華客船に乗って世界旅行」というコンセプトと「時空の難破船-ロストシップ-」というタイトルを手がかりに、今回もまた講師という名の闇のプロデューサーの、恐ろしいほどの裏の作業がありました。

講座の中で受講生たちにも言いましたが、同じコンセプトでコンサートを作ったとしても、その完成形はプロデューサーの数ほどあります。「音楽で世界一周」というテーマのコンサートなんて、ピアノでも歌でも他の楽器でも山ほどあるわけで、今回も歌とピアノだけのコンサートでもよかったわけです。今回と同じ予算で作るなら、それに映像をつけることもできたかもしれません。僕は、できるだけたくさんの民族楽器を見てもらい聴いてもらうというスタイルを選びました。

今回のコンサートは、子供たちの夢に便乗して、自分の夢のコンサートを作ったんじゃないの?と言われたら反論しません。全員が複数の楽器を操り、複数の国のスタイルで奏でられるスペシャリストで、普通に活動してたら恐らく交わることがなかったかもしれない人たちで、どんな音楽ができるんだろうと妄想するだけで、僕自身のワクワクが止まりませんでした。そしてそのワクワクは練習が始まるとさらに加速していき、本番でピークを迎え、それは本当に幸せなひとときでした。

これも受講生たちに伝えましたが、僕がコンサートを企画するときに大切にしていることは、どんな演出や構成であっても必ず音楽が主役になること、そして条件が許す限り演奏者の魅力を最も伝えられる形を探るということです。今回は全員が作曲もできる人たちだったので、それぞれのオリジナル曲を演奏してもらいました。それは「豪華客船で世界旅行」というコンセプトには本来必要ない曲たちかもしれません。でも結果的にそのオリジナル曲の演奏こそが、それぞれの魅力を最大限に引き出す時間になったのではないかと自負しています。

僕はストーリーやコンセプトありきで窮屈な選曲をするのは、コンサートとしては本末転倒だと思っています。「カルテ」もそうなんですが、まず音楽最優先で構成を作ってから後付けでストーリーを考えます。今回はなかなかしっくりくる展開にならなくて悩みましたが、最終的に「人間と自然との共生」というテーマを見つけて、ようやく納得がいくストーリーになりました。

ここからは受講生を差し置いて、更に個人的な思いですが、今回のコンサートで一番心を砕いたのが電子オルガン(エレクトーン)の扱いでした。エレクトーンをお客様扱いせず、他の楽器と対等なアンサンブルになることを望みました。今井さんが頑張ってくれたおかげて、個人的にはエレクトーンと他楽器とのコラボとして、なかなか画期的な試みになっているのではないかと思っています。

映像の音楽は、今回のために今井さんに作曲してもらった「メジロ・エキスプレスのテーマ」です。闇の鬼プロデューサーが、メロディーが違うコード進行が嫌だと何度もダメ出しして作ってもらった曲です。これはコンサート本編のラストで演奏したバ―ジョンですが、この曲の終盤のサウンドの幸福感、ヤバくないですか?エレクトーンと生楽器が対等でこんなに違和感なく混じってるの、やっぱり画期的だと思うんですけどねぇ…。

そのうち、いくつかの曲の動画を公開できると思います。オリジナル曲はどれも超素敵だったから全部あげたいけど、民族音楽もいい音してると思います。全ての国の音楽スタイルを理解できてるわけじゃないから、なんちゃってと言われたらそうかもしれないけど、どの音楽にもリスペクトを持って失礼のないように仕上げたつもりです。

なお、僕のポリシーは「終演後のレポートまでがプロモーション」です。来られなかった人たちを悔しがらせることができれば目的は達成です。これからじわじわ悔しがらせます。