演奏会をひらく理由

僕が学校教育の道を諦めたのは、林光さんのような先進的な人たちが精力的に活動・発信しても何も変わっていないように見えた、当時の学校教育に失望したからというのが一因ですが、林さんの以下の言葉は、今も多くの音大生がドキッとする指摘ではないかと思います。

 “まったく対照的なのが、さいきん私のところにおくられてきた、ピアノ演奏会の招待状の文面です。
 そこには、自分はこんどナニナニ音楽大学の大学院を修了するので、しめくくりのいみで演奏会をひらくことにしたから、聴きにきてほしい、という意味のことが、書いてありました。
 お客様に楽しんでいただきたい、あるいはどうしても聴いてほしいこと、言いたいことがある、というのが演奏会をひらく理由でないとしたら、なんのためにひらくのでしょう。お金がほしいから、というほうが、まだ必然性が感じられるのではないでしょうか。”
林光「音楽 教育 しろうと 論」