僕が学生のときは、ピアニストとの練習を録音したことなどありませんでしたが、今は合わせのたびに毎回録音しています。僕がプロになれないなと思った理由として、モニタリング能力のなさというのがあります。ついさっき終わったばかりの本番でも、自分の演奏のどこが上手くいって何をミスしたのか、はっきりとは思い出せないことが常でした。だから僕には、時間を置いて客観的に聴くというプロセスが必要だと感じています。
演奏家の皆さんはわかると思いますが、練習では1曲をノンストップで通して演奏することはほとんどありません。最初の1回はさっと通したとしても、あとは気になるところを少しずつ止めながら、合わせにくい箇所を何度か繰り返したり、お互いの解釈をすり合わせたりしながら進んでいきます。僕はそうした演奏の断片が残された練習の音源を、家に帰ってから編集して1曲通して聴けるようにします。そしてそれを何度も何度も聴きます。通して聴いてみたときに「ん?」と引っ掛かるような流れの悪いところをチェックして、次の練習までに解消していきます。時間をかけて少しずつ仕上げるために、2ヶ月間隔のペースでレコーディングを予定しています。