音楽と暮らす方法

アルバムタイトルに「How to live with music」というキーワードが思い浮かんでいます。このレコーディングは、今の僕が示すことができる「音楽と暮らす方法」です。演奏を生業にせず、20年間ほとんど楽器に触れることがなかった僕でも、スタジオレコーディングという形でなら、自分の音楽を残せるかもしれない。おそらく最初で最後の演奏家としての証です。

もう今の僕には、基本的なホルンのレパートリーを演奏できるスタミナはありません。だからホルンより少し音域が低い楽器の曲から、今の自分にも無理なく演奏できる、身の丈に合った曲を選んでいます。学生時代に勉強したレパートリーが演奏できなければ意味がないと思う人もいるかもしれません。でもこれが僕の考える「音楽と暮らす方法」です。

ピアノの奈良綾香さんには無理をお願いして、ピアノパートは電子ピアノで別録りしています。後からホルンだけをワンフレーズずつ何度も録り直し、さらに録った後にタイミングやピッチ修正を加えるためです。現役のプレーヤーが同じ曲をレコーディングしたら、ピアノと一緒に演奏して30分で録り終わるでしょう。こんなやり方は不自然だという人もいると思います。失うものが多いことも承知しています。でもこれが僕の考える「音楽と暮らす方法」です。

あと数回のレコーディングを経て、夏ぐらいには完成させたいなと思っています。

A Song for Japan

先日録り終わったレコーディング第1弾から「A Song for Japan」を公開します。この曲は2011年に、東日本大震災へのエールとしてフェルヘルストによって作曲されました。この曲の楽譜はフリーで公開されており、オリジナルのトロンボーンでの演奏だけでなく、様々な楽器編成に編曲され、現在も演奏され続けています。

自分の思いを作品として残すことの意味を、最近よく考えます。個人的な感想を口にするだけではなく、その思いに普遍性を持たせて作品にすることで、より多くの人の心に、時を超えて届けることができる。作品として残されていることで、僕たちはいつでもそこに新しい思いを込めたり、新鮮な気持ちで受け止めることができます。震災に遭われた方々の未来が明るいものであることを、今もこれからもずっと信じています。

《演奏者紹介》
音大を卒業して約3年間ホルン奏者として活動した後に就職。その後20年間はほとんど楽器にも触れることがなかったが、2015年から断続的に演奏を再開。50歳の節目に音楽人生の証としてソロアルバム制作を決意。「How to live with music(仮)」2019年夏頃完成予定。

柳楽正人 ホルン
奈良綾香 ピアノ

「こどものための新しいうたコンサート」終演

3月2日に開催した「こどものための新しいうたコンサート」無事に終演いたしました。ご来場くださった方、メールやメッセージで応援していただいた方(お返事がお返しできなくてすみません!)、気にかけていただいた方、そしてご出演いただいた演奏者や作曲家の皆様、本当にありがとうございました。

子供の数はゼロでもいいから何とか格好がつくぐらいの集客をと思っていましたが、お子様連れの親子も何組か来てくださっていて、また大人の皆様には強制的に子供になっていただくという強引な手法を使って、たくさんの子供たちが集まるコンサートとして開催することができました。

(おそらくですが、親子の皆様は「いこーよ」にupした告知を見て来てただいたのではと思います。ミタホールでも感じていましたが「いこーよ」は小さいお子様をお持ちのご家族には絶大な信頼を得ている情報サイトだという印象です)

今回の企画は、昨年末に急に降ってきた依頼でした。子供か高齢者を対象にした催しを「年度内に」してほしいということだったのですが、その時点で開催まで半年を切ってるし、僕は1月のさきら公演が終わるまで身動きが取れなかったので、まさに突貫工事で準備を進めたコンサートでした。

以下、本来なら出演者、作曲者への謝辞が1人ずつ続くわけですが、長くなるので今ここではやめておきます。もし音源を公開できそうだったら、あらためて個別にご紹介できたらいいなと思います。どれも本当に素敵な曲で、森田さんともみやまさんの演奏も素敵で、実演だけで留めておくのはモッタイナイという気持ちが強いです。(個人的には、わらべうた輪唱のリハーサルで、作曲者本人が間違えたというNGテイクを公開したい気満々です笑)

今年に入ってから、さきら公演と、こどものうた公演という大きなミッションをクリアしたことで「予算とお題に合わせて面白いコンサートを作る才能があるんじゃね?」ぐらいに気が大きくなってます。(いや、集客はどちらも才能ナシです…すみません)

突貫工事でコンサート当日まで胃が痛かったけど、今回のコンサートをご支援いただいた団体様のおかげで、ものすごくスペシャルな経験をさせていただきました。本当にありがとうございました。

レコーディング1日目終了

レコーディング終わりました。楽しかった!そして時間はいくらあっても足りない!今日絶対に録音したい本命1曲を含めて4曲用意していったけど、結局3曲「半」収録できました。「半」というのは、ピアノパートだけ録音してホルンが録れなかった曲が1曲あったからです。

今回のレコーディングは全てクラシックの作品ですが、ホールでグランドピアノを弾くのではなく、レコーディングスタジオの電子ピアノで録っています。そしてピアノだけ先に録音しておいて、それに後からホルンを乗せる方式を取りました。僕のようなたまにしか吹かない、だから演奏の精度が低い、だからスタミナがないプレーヤーは、少しずつ少しずつ、何度も何度も録り直しながら進んでいかないといいものができないことはわかっているから、そのエンドレスリテイク地獄にピアニストを巻き込むわけにはいかないのです。

このやり方だと、ピアノとホルンはそれぞれ独立して録音できるので、例えばホルンの音だけを少し修正するということも可能です。今はピッチやリズムのズレも簡単に直すことができるので、編集に時間をかけて気になるところはどんどん直していきました。

クラシックの演奏家がクラシック作品をレコーディングするとき、電子ピアノを使うという選択肢はまず考えられないし、ソロを別録りしてピッチ修正をがっつり入れたりする人も、まずいないと思います。これは明らかな邪道です。でも愛好家が自分の記念として演奏を残したいと思うなら、そしてそれが単なる成長の記録ではなく自分が考える音楽により近づけた「作品」として残したいと思うなら、スタジオでの録音は充分に検討するに値すると思います。僕が作った作品を聴いてもらうことで、それを実感してもらえたらいいなと考えています。レコーディングはあと数回続きますが、3月中に仮ミックスの曲を1曲公開する予定です。

いよいよ来週レコーディング

このCDが完成したら音楽の世界から離れようと思ってるんですよ。あ、いやいや、本当に離れることを決めているというより、これで全然違う仕事に就いても悔いがないっていう感じですかねぇ。最近もほら、池江さんや紗良オットさんの病気のニュースがあったけど、僕らも明日健康でいられるかどうかなんてわからないじゃないですか。だから、自分で区切りをつけられるうちに、自分で区切りをつけたいっていう気持ちが強いんですよね。例えば、もし僕が明日事故とかに遭って演奏できない身体になって、この録音ができなくなったとしても、多分、後悔はしないと思うんですよ。ああ、間に合わなかったかとは思いますけど。でも、録音の計画をしないままで病気とかになったとしたら、それは後悔すると思うんですよね。

…などと語っていた今日のリハーサルの録音を丸々消してしまって若干凹んでいますが、来週いよいよホルンソロのCD制作の第一弾のレコーディングをしてきます。これから夏ぐらいにかけて何回かに分けて録る予定です。