2012-5-10 橋本秀幸 インタビュー 2/4

  • 今の音楽を弾くようになるまで

――ここから少し、橋本さんの音楽体験をお聞きしたいんですが、ピアノは小さいときから習ってたんですか?

「僕はエレクトーンから入ってるんです」

――そうなんですね。でも当時は今みたいな音楽をやってたわけじゃないですよね?

「その時はまだそんな感じじゃないです」

――ここにたどり着くまでには色々なストーリーがある?

「ある……かもしれない(笑)」

――あはは。個人的には、こういう音楽を弾く人の入り口にすごく興味があるんです。クラシックでもないしジャズでもないし、どのタイミングでどういうところから入っていくのかなって

「ああー。一番自分が素直に自然に弾けるというか、一番素直に自然に弾こうとしたら、こうなると思うんで。色んなジャンルをやってきたけど、ここに戻ってきたというか」

――エレクトーンはずっとやってたんですか?

「高校3年ぐらいまでは、頭の中がエレクトーンでした(笑)。だから普通のバンドの曲とか聴いても、エレクトーンだったらどういう風に弾くんだろう、みたいな感じだったと思うんです。高校を卒業した後に、甲陽音楽学院(2年制の音楽専門学校)に入るんですけど、甲陽に入ったときも、多分エレクトーンでやっていくと思ってました」

――甲陽にはピアノで入ったんですよね

「入ったのはジャズピアノなんですけど、エレクトーンで入れる学校の見学とかにも行ってて、迷ってたんです。けど、エレクトーンの世界ってすごく狭く感じたので、エレクトーンをやるにしても、もっと広い世界を知った上でやりたいなと思って。ジャズピアノ科にしたのも、別にジャズをそんなに聴いてたわけでもないんですけど、ジャズピアノ理論ってすごく高度なイメージがあったんですよ。だからジャズピアノをやっておけば、大体色々対応できるかなと(笑)。それでジャズピアノ科にしました」

――甲陽で勉強するのは、いわゆるオーソドックスなジャズですよね

「今みたいな音楽に近づいて即興とかするようになるのは、確か2年生ぐらいからですね。当時の個人レッスンの先生にはすごく影響は受けました」

――どんなレッスンだったんですか?

「『本当に感じた音だけを弾きなさい。全然感じてない音をばーっと弾くより、弾きたいっていう音が出るまで待ってもいいから、そんな音だけを弾きましょう』って。で、実際そういう風にやって、『あ、それでいいんだ』みたいな」

――なるほどねぇ

「それで自分を受け入れてもらった気がします。あとは聴きに行くライブや、同期のミュージシャンからも影響を受けて、その辺からちょっと今に近づいてきた感じです」

――ジャズ的なスイング感とかが外れて、本当に今回のアルバムのような音楽をやるようになったのは、卒業してからさらに突きつめていった感じですか?

「例えば『klock』や『elephant walk』は、今でもバンドだと普通のスイングの感じでやったりします」

――あ、そうなんですね

「他の曲だと弦楽器が合いそうだとかあるんですが、でも今回はあえてシンプルな形で提示しようと思って、思い切って全部ピアノソロにしたので、それが独特の世界観を作っているのかもしれません」

「一番しっくりくるものを自然体で」につづく>

橋本秀幸

1986年、大阪生まれのピアニスト、作曲家。空間を活かした即興演奏と、作曲作品を軸に音楽活動を行う。自然と奏でられるシンプルな美しい響きで、様々な楽器や声との共演のほか、 ヨーロッパでも映像とのコラボレーションを行うなど多彩な広がりを見せている。ソロピアノ2部作として『earth』を2012年6月にリリース、同年冬に『air』をリリース予定。

http://hideyukihashimoto.com/

2012-5-10 橋本秀幸 インタビュー 1/4

今回のインタビューは、2012年6月20日に1stソロアルバム「earth」をリリースされる、若手ピアニストの橋本秀幸さんをお迎えしました。アンビエント・ミュージックというジャンルをご存知でしょうか?環境音楽と訳されることもあり、一般的にははっきりとした構成やビートを持たず、空間的な広がりを意識した静的な音楽です。橋本さんが作曲・演奏されるピアノ曲は、そのアンビエント・ミュージックやニューエイジ・ミュージックに分類される音楽です。アルバムの楽曲は実際に試聴していただくとして、このインタビューではアルバム制作の過程や、橋本さんのこれまでの音楽体験などを伺いました。

  • スタジオとホールで録音

――このアルバムを作るにあたって、スタジオとホールで計3日間レコーディングされたそうですが、もともとの計画では、スタジオとホールの録音を組み合わせて1枚のアルバムにするつもりだったんですよね

「そうです」

――でも最終的には、スタジオとホールは別のアルバムで出すことになったんですね

「今回のアルバムがスタジオ録音で、ホール録音のアルバムを冬頃に出す予定です」

――録音する前は、自分の中で完成予想というかイメージはあったんですか?

「曲順とかも考えて、アルバム1枚分で考えてたんですけど」

――ということは、もともと収録したい曲も決まってたんですか?

「作ってた曲を入れるのと、即興を4曲ぐらい録ろうかなと思ってたんですが、ホールの方で即興がむちゃくちゃいっぱい録れて(笑)。それでエンジニアさんとも話しをして、即興メインのアルバムでもいいかもねって。抽象的な感じの間に、ぽっと曲っぽいのが入ってたら映えるし」

――なるほど

「でも曲は曲で、出したい曲がそれこそ10曲あるし、どうしようかなって」

――で結局、どっちも生かして別々に出すことになったんですね。そもそもスタジオとホールと2ヶ所で録音しようと思ったのは何でなんですか?

「どうしても録ってみたいピアノが2台あったんです。あとは本当にシンプルなピアノソロなんで、ホールとスタジオを混ぜたら、音場が変わるのが面白いかなと思って」

――ホールとスタジオの音源を交互に混ぜる感じですか?

「そうなんですけど、録ってみてから、分けちゃった方がいいかなぁと」

――録った音を聴いてみて、混ざらないなぁって感じたんですか?

「即興のいい曲が録れたのが、ホールの録音がほとんどだったんで、即興メインのアルバムを作ってみたいって思ったのが一番です」

――ああ。音場というより、内容的に分けちゃった方がいいんじゃないかってことですね

「ホールとスタジオで同じ曲を録ったりしてるんですけど、最後に入れてる『grounding』はホールっぽいイメージだったんで、それだけホールの音源にしようかなって思ったんです。けど結局、スタジオの音で統一した方が流れで聴いてて自然な感じだったんで、全部スタジオになりました」

――このアルバムは、即興じゃなくて作った曲というのはどのぐらいあるんですか?

「2枚目のアルバムが即興中心で、今回は作った曲が多いです。タイトルが大文字で始まる曲が『Hikari』と『Mai』と『Rin』の3曲あるんですけど、それが即興です」

――なるほど!そういう見分け方ができるんですね。もともと入れようと思ってた曲は、今回のアルバムには入ってるんですか?

「2枚目の方に2曲入っていて、あとは全部このアルバムに入ってます」

――そうするとこのアルバムは、オリジナル曲+即興が3曲ということで、もともと作ろうと思ってたイメージに近いんですね

「そうですね」

――録ってみてから、ホール音源の即興は別にまとめた方がいいんじゃないかということになったと

「はい」

「今の音楽を弾くようになるまで」につづく>

橋本秀幸

1986年、大阪生まれのピアニスト、作曲家。空間を活かした即興演奏と、作曲作品を軸に音楽活動を行う。自然と奏でられるシンプルな美しい響きで、様々な楽器や声との共演のほか、 ヨーロッパでも映像とのコラボレーションを行うなど多彩な広がりを見せている。ソロピアノ2部作として『earth』を2012年6月にリリース、同年冬に『air』をリリース予定。

http://hideyukihashimoto.com/